kaleidoscope










「あ…」

6時限目の英語の授業中、偶然開いた辞書のページ。
そこで偶然見つけた、単語。




kaleidoscope

a kaleidoscope of...

kaleidoscopic





「……」

“kaleidoscope”が“万華鏡”っていう意味を持っていたことは知っていた。
でも、それ以外のは…

まるで、エージみたいだ

彼のあの大きな瞳を思い出して、静かに笑った。
けどすぐに、授業中だということを思い出してそっちに集中しなおした。
その後プリントをやる時間にり、早々に済ませた俺はさっきの単語をノートの端に綴った。
全部書いたところで、その日の授業が終った。




* * * * * * * * * *




「おーいしー!ダブルスの練習始めようぜっ」

部活の時間、いつも通り英二が駆け寄ってくる。
好奇心に満ちた猫のように、くりくりと大きな目。
不思議なほどに、俺をぐいぐいと引き込んでいく。

英二はとにかく、よく動く。
一つ、アクションを起こしたかと思えば、一瞬のうちに消えていく。
“同じ”が二つとないなぁ…そう思う。
その瞳も、常に対象を変化させていく。
二度と同じ物を映すことは、ないんじゃないかと思うほどに。

「なあ、エージ」
「なにー?おーいし」
「エージって、カレイドスコーピック。だな」
「はっ?にゃに!?カレーライス???」

カレイドスコーピックだよ、英二…。
って、俺と話してたのに、桃のところへ駆け寄っていった。
どこまでも好奇心の尽きないヤツだな…。
本当に、英二は見ていて飽きない。




a kaleidoscope of...
変転きわまりない[多種多様な]…、目まぐるしく移り変わる…

kaleidoscopic
(情景が)万華鏡の(ような)、くるくる変化する





まさに、英二にピッタリの言葉じゃないか。
一瞬でも目を離してしまえば、あっという間にその変化を見逃してしまう。
そんな、“くるくる変化する”英二が好きで仕方ない。
じっと見続けてしまう…気になって、仕方ない。
英二の目は、今、何を映しているのか。
誰を見て…誰を、想っているのだろうか。
掴み所のない彼だから、惹かれる一方だ。

例え英二の目が俺を映していないとしても。
俺は、英二だけをずっと見続けよう。
その瞳に一瞬でも、俺が映っていたのならそれで十分。
彼の心に入り込めたら、とまでは思わない。
ただひたすら、彼を追いつづけられるだけでいいから。




* * * * * * * * * *




「よし、今日はこれまでだ。解散!」
「ありがとうございました!」

あっという間の時間が終ってしまった。
カレイドスコープの夢から覚めると、そこから先はまた、平凡な一日。
また明日…だな。
明日はどんな模様を浮かべるのか、今から楽しみだ。
日常はそうして過ぎていくんだけど、今日は一味違っていた。
珍しく、英二に一緒に帰ろうと、誘われた。

「ね、おーいし。これから毎日一緒に帰ろ?」

こりゃ参った。これまた珍しい…
気分屋な性格だから、唐突にこうなっても不思議はないけど。
「ねね、いいでしょ?」と、万華鏡の瞳が俺を映す。

「なあ、エージ。カレイドスコーピック、覚えてるか?」
「ああ、さっき言ってたね。何で俺がそれなの?ってかどういう意味???」
「“くるくる動く”…だよ」

「ふーん」と言うと両手を後頭部で組み、何か考えてる。
そして、ふと何かを思いついたらしく、今度はポン、と手を叩く。

「おーいし、俺はくるくるって落ち着きないけどさ、おーいしのことだけはずっと見てるよ」
「え…?」
「だーかーらー!おーいしのことずっと見てた!これからも見てる!」
「あ…それって……」
「だ・い・す・き!」

まさか英二からこんなこと言われるとは思ってなくて…
受け取り方に誤りがないのなら、ものすごく照れくさい話だけど。
それにしても、ここぞとばかりに見透かされた。
やられたな…そう思う。
恥ずかしくて困ったように笑ってたら、英二が言った。

「“おーいしの今”はこの瞬間しかない。おーいしだって、かれーどすこーぴっく?なんだよ」
「…あ、ああ、そうかもしれないね」
「だから俺、おーいしを一瞬でも見逃したくないんだ。すんげぇ好き…だもん」
「ありがとう…」

どこまでもどこまでも、気まぐれで、動きまでもかカレイドスコーピックな君。
どうかこの気まぐれな夢から、覚めることのありませんように…




中学二年の、ある日の出来事。






END.



奥さん大菊ですよ!?(いきなり小説の雰囲気をぶち壊す)
ありがとうございました、常葉さん!
押し付けたキリリクのお礼にと、こんな素敵なものをいただいてしまいました!
感動です・・・本当にありがとうございました。浮かれたおしたコメントをつけてしまって申し訳ありません…。




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